犬の耳掃除を自宅で安全に!正しいやり方、頻度、嫌がる時の対処法
愛犬の健康管理において、忘れられがちなのが耳のケアです。「うちの子は耳を触られるのを嫌がるから…」「どこまで掃除していいのか分からない」「かえって悪くしてしまいそう」といった不安から、耳掃除をためらっている飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、犬の耳はデリケートな器官であり、適切なケアを怠ると、悪臭、かゆみ、そして外耳炎などの深刻な耳トラブルに発展する可能性があります。特に垂れ耳の犬種は、通気性が悪いため注意が必要です。
この記事では、ご自宅で愛犬の耳を安全に、そしてストレスなく掃除するための具体的な方法とコツを、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。正しい知識と準備で、愛犬の耳の健康を守り、快適な毎日を送れるようにサポートしていきましょう!
※この記事は一般的な情報を提供するものであり、特定の犬種や個体、健康状態によっては異なる対応が必要な場合があります。すでに耳に炎症や痛みがある場合、大量の耳垢や異臭がする場合は、ご自身で判断せず、かかりつけの獣医師や専門家にご相談ください。
なぜ犬の耳掃除が必要なの?放置するとどうなる?
犬の耳は、人間の耳とは構造が異なり、様々な耳トラブルを起こしやすい特徴があります。耳掃除を怠ると、どのような問題が起きるのでしょうか?

耳掃除をしないと起こるトラブル
- 外耳炎: 最も一般的な耳の病気です。耳道に溜まった耳垢や汚れが、細菌やマラセチア(カビの一種)の温床となり、炎症を起こします。かゆみや痛み、赤み、異臭、耳垢の増加などの症状が見られます。
- 耳ダニの寄生: 耳ダニが寄生すると、激しいかゆみと黒っぽい耳垢(コーヒーかすのような状態)が特徴です。犬が頭を振ったり、耳を引っ掻いたりするようになります。
- 耳血腫: 激しく頭を振ったり、耳を掻きむしったりすることで、耳介の血管が破裂し、血液が溜まって膨らむ状態です。治療には手術が必要になることもあります。
- 悪臭: 耳垢が溜まると、独特の不快な臭いを発するようになります。
- 痛みや不快感: 炎症や感染症が進行すると、犬は強い痛みを感じ、触られることを極度に嫌がるようになります。
耳のトラブルは、犬にとって非常にストレスとなり、生活の質を著しく低下させます。早期発見・早期対応のためにも、日頃からの観察と適切なケアが大切です。
犬の耳の構造とタイプを知ろう
安全な耳掃除を行うためには、犬の耳の構造を理解することが重要です。犬の耳は、外側から「外耳」「中耳」「内耳」の3つの部分に分けられます。
犬の耳の構造
- 外耳: 目に見える耳介(耳たぶ)と、奥へと続く垂直耳道、水平耳道で構成されています。犬の耳道はL字型に折れ曲がっており、この構造が汚れが溜まりやすく、通気性が悪くなる原因にもなります。
- 中耳: 鼓膜の奥にあり、音を伝える小さな骨(耳小骨)などがあります。
- 内耳: 音を感じる蝸牛や平衡感覚を司る三半規管などがあります。
私たちが耳掃除をするのは、主に「外耳」の部分です。特に、L字型に曲がった耳道の奥は非常にデリケートなため、綿棒を奥まで入れたり、無理に掃除しようとしたりするのは絶対に避けましょう。かえって耳垢を奥に押し込んだり、鼓膜を傷つけたりする危険性があります。
耳のタイプとトラブルのリスク
犬の耳は、大きく分けて「垂れ耳」と「立ち耳」に分類され、それぞれ耳トラブルのリスクが異なります。
- 垂れ耳の犬種(例: コッカースパニエル、ゴールデンレトリバー、ビーグルなど):耳介が垂れているため、耳道が塞がれやすく、通気性が悪くなりがちです。湿気がこもりやすく、耳垢が溜まりやすいため、細菌やマラセチアが繁殖しやすい環境になります。定期的なチェックと、よりこまめなケアが必要です。
- 立ち耳の犬種(例: チワワ、柴犬、ジャーマンシェパードなど):耳道が解放されているため通気性が良く、比較的耳トラブルは少ないとされています。しかし、汚れが溜まらないわけではないので、やはり定期的なチェックとケアは必要です。
愛犬の耳のタイプを理解し、それぞれに合ったケアを心がけましょう。
耳掃除に必要な道具を揃えよう
安全で効果的な耳掃除を行うためには、適切な道具を揃えることが大切です。人間のものとは異なる、犬専用のアイテムを使用しましょう。
1. 犬用イヤークリーナー
犬の耳垢を柔らかくし、浮かせやすくする洗浄液です。アルコールフリーで、耳に優しい成分のものが多く、液だれしにくいものや、保湿成分が配合されているものなど様々です。必ず犬専用のものを選びましょう。
- 点耳タイプ: 耳の中に直接注入して使用します。
- 拭き取りタイプ: コットンなどに含ませて、拭き取る際に使用します。
どちらのタイプも、愛犬の耳の状態や、ご自身の使いやすさで選びましょう。
2. コットン、または医療用ガーゼ
耳の表面や、耳道の入り口付近の汚れを拭き取る際に使用します。人間の化粧用コットンや、医療用のガーゼが適しています。綿棒は、耳垢を奥に押し込んだり、鼓膜を傷つけたりする危険があるため、使用は避けましょう。どうしても使用したい場合は、耳介のひだなど、目に見える範囲のごく浅い部分に限ります。
3. ご褒美のおやつ
耳掃除を良い経験として認識させるために、ご褒美は欠かせません。愛犬が喜ぶ小さなおやつをたくさん用意しておきましょう。
4. その他あると便利なもの
- タオル・ブランケット: 落ち着かない犬を包んで安定させたり、耳掃除中にイヤークリーナーが垂れても服や床が汚れないように保護したりするのに使います。
- ライト・ヘッドライト: 耳の奥までよく見たい時に、ライトで照らすと見えやすくなります。
- 汚れてもいい服: イヤークリーナーが飛び散る可能性があるので、汚れてもいい服を着用するか、エプロンなどをつけると良いでしょう。
耳掃除の頻度とタイミング
耳掃除の頻度は、犬種や個体差、耳のタイプ、耳垢の量、活動量などによって大きく異なります。「何日に一回」と決めつけるのではなく、愛犬の耳の状態を観察して判断することが大切です。
一般的な目安
- 垂れ耳、耳垢が出やすい犬種: 週に1回~2週間に1回程度
- 立ち耳、耳垢が少ない犬種: 月に1回程度、または汚れが気になった時
耳をチェックする頻度は、少なくとも週に1回は行い、汚れ具合や異臭、赤みなどの異常がないか確認しましょう。もし、耳掃除の後にすぐに汚れる、頻繁に耳を痒がる、頭を振るなどの症状が見られる場合は、耳のトラブルの可能性があります。
耳掃除に最適なタイミング
犬がリラックスしている時がベストです。散歩の後や、食後で満足している時、または眠くてまどろんでいる時などがおすすめです。また、シャンプーの後は耳の中に水分が残りやすいため、シャンプー後に耳掃除を行うと良いでしょう。
自宅で安全に耳掃除を行う手順とコツ
ここからは、具体的な耳掃除の手順と、愛犬に負担をかけずに安全に行うためのコツをご紹介します。
ステップ1: 愛犬を落ち着かせる
- リラックスできる環境作り: 静かで落ち着いた場所を選び、犬が安心して横になれるようにします。
- 触れ合いから始める: 耳掃除を始める前に、優しく声をかけながら、耳に触れることから始めましょう。耳に触られることに慣れさせることが大切です。
- ご褒美を活用: 耳を触らせてくれたら、すぐに褒めておやつを与えます。これを繰り返すことで、「耳に触られると良いことがある」と犬が学習します。
ステップ2: 耳の状態をチェックする
- 耳介を持ち上げ、耳道の入り口付近をよく観察します。
- チェックポイント:
- 耳垢の色や量(黒っぽい、黄色っぽい、ベタベタしている、多すぎる)
- 耳道の赤みや腫れ
- 異臭の有無(酸っぱい臭い、甘い臭いなど)
- 耳毛の量(耳毛が多い場合は、通気性を悪くしている可能性があります)
- 犬が耳を痒がったり、頭を振ったりする頻度
- 異常が見られる場合は、無理に掃除せず、すぐに獣医師に相談しましょう。
ステップ3: いよいよ耳掃除!
【基本的な掃除方法(イヤークリーナー点耳タイプを使用する場合)】
- 耳介を持ち上げる: 片手で愛犬の耳介を優しく持ち上げ、耳道がまっすぐになるようにします。
- イヤークリーナーを注入: もう一方の手でイヤークリーナーのボトルを持ち、耳道の奥まで届くようにノズルを入れ、規定量(製品に記載の量を参考に)をゆっくりと注入します。ノズルを深く入れすぎないように注意しましょう。
- 耳の付け根をマッサージ: イヤークリーナーを注入したら、すぐに耳介を閉じ、耳の付け根(耳の根元)を優しく数分間マッサージします。「クチュクチュ」という音が聞こえれば、クリーナーが耳垢と混ざり合っている証拠です。
- 頭を振らせる: マッサージが終わったら、愛犬が頭を振るのを待ちます。頭を振ることで、耳垢やクリーナーが外に出てきやすくなります。汚れてもいいように、タオルなどを敷いておくと良いでしょう。
- 耳の入り口を拭き取る: 清潔なコットンやガーゼを指に巻きつけ、耳道の入り口付近や耳介のひだ、目に見える範囲の汚れを優しく拭き取ります。奥に押し込まないように、あくまで入り口付近のみを拭き取るのがポイントです。
- 乾かす: 最後に、耳の中に湿り気が残らないように、清潔な乾いたコットンやガーゼで水分を軽く拭き取ります。自然乾燥でも構いませんが、湿気が残ると雑菌が繁殖しやすいため、通気性を良くして乾かすことが重要です。
【イヤークリーナー拭き取りタイプ、または点耳タイプが苦手な場合】
耳の中に液体を入れるのを嫌がる犬には、イヤークリーナーをコットンやガーゼにたっぷり含ませて、耳道の入り口付近や耳介のひだの汚れを優しく拭き取るだけでも効果があります。無理に奥まで入れず、見える範囲の汚れを取り除くことを意識しましょう。
ステップ4: たっぷり褒めてご褒美!
- 耳掃除が終わったら、すぐに愛犬をたくさん褒めて、大好きなおやつをたっぷり与えましょう。
- 「耳掃除は嫌なことじゃない、終われば良いことがある」と学習させることが、次の耳掃除をスムーズに行うための秘訣です。
一度に両耳の掃除が難しい場合は、無理せず片耳ずつに分けたり、数日に分けて行ったりするのも良いでしょう。何よりも大切なのは、愛犬が耳掃除を嫌いにならないようにすることです。
耳掃除中に気をつけること・やってはいけないこと
安全な耳掃除のためには、いくつかの注意点があります。
- 綿棒を奥まで入れない: 繰り返しになりますが、綿棒を耳道の奥まで入れると、耳垢を押し込んだり、鼓膜を傷つけたりする危険があります。使用は耳介のひだなど、目に見える範囲のごく浅い部分に留めましょう。
- シャンプーの泡や水が入らないように注意: シャンプー中に耳の中に泡や水が入ると、耳トラブルの原因になります。シャンプー中は、耳の中にコットンなどを軽く詰めて保護するか、耳をしっかり押さえてあげましょう。
- アルコールや刺激の強いものを使わない: 人間用の消毒液やアルコール、刺激の強い洗浄剤は、犬のデリケートな耳には刺激が強すぎます。必ず犬専用のイヤークリーナーを使用しましょう。
- 無理やり行わない: 犬が嫌がっているのに無理やり押さえつけて行うと、耳掃除がトラウマになってしまいます。犬との信頼関係を壊さないよう、焦らず、優しく行いましょう。
- 異常がある場合は自己判断しない: 耳垢の量が異常に多い、異臭がひどい、赤みや腫れがある、痛がっているなどの症状が見られる場合は、自己判断で掃除を続けず、すぐに獣医師に相談してください。症状が悪化する可能性があります。
耳掃除を嫌がる犬への対処法
「うちの子はとにかく耳を触られるのを嫌がる!」という飼い主さんもご安心ください。焦らず、少しずつ慣れさせていくことが重要です。
1. 慣らし期間を設ける(ポジティブトレーニング)
- 耳に触れる練習: 耳掃除そのものではなく、「耳に触られること」に慣れさせることから始めます。耳に触れたらすぐにご褒美。これを繰り返します。
- 耳掃除道具に慣れさせる: イヤークリーナーのボトルやコットンを見せるだけでもご褒美を与え、怖いものではないと認識させます。
- 段階的に慣れさせる: 耳を触る→耳介を持ち上げる→クリーナーの匂いを嗅がせる→耳に当てる→実際に掃除する、とスモールステップで進めていきます。
- 短時間で終了: 嫌がる素振りを見せたら、すぐに中断し、また次の機会にチャレンジしましょう。
2. 複数人で協力する
一人が体を支え、もう一人が耳掃除をするなど、複数人で協力することで、よりスムーズかつ安全に行える場合があります。
3. 落ち着かせる工夫
- 抱っこやタオルで安心感を与える: 犬が落ち着く体勢で抱っこしたり、タオルで優しく包んだりすると、安心する子もいます。
- マッサージ: 耳掃除前に優しくマッサージをして、リラックスさせてあげるのも良いでしょう。
- 食事中に試す: 食事中に耳に触る練習をしたり、耳掃除中に夢中になるようなおやつを与えたりするのも有効です。
4. プロに頼むことも検討する
どうしても自宅での耳掃除が難しい場合は、無理せずトリミングサロンや動物病院のプロに依頼しましょう。プロの技術でスムーズに耳掃除ができれば、犬も「耳掃除は嫌なことじゃない」と学ぶきっかけになることもあります。
まとめ:正しい耳掃除で愛犬の快適な毎日をサポートしよう!
犬の耳掃除は、外耳炎などの耳トラブルを予防し、愛犬が快適に過ごすために非常に重要なケアです。最初は不安かもしれませんが、正しい知識と手順、そして何よりも愛犬への優しさを持って行えば、きっと自宅で安全に耳掃除ができるようになります。
焦らず、愛犬のペースに合わせて、ポジティブな経験を積み重ねていきましょう。ご褒美をたくさんあげて、耳掃除が「嫌な時間」ではなく「飼い主さんと触れ合う大切な時間」になるように工夫してみてください。
もし途中で不安になったり、どうしても上手くいかない場合、または耳に異常が見られる場合は、無理せずに動物病院やトリミングサロンのプロに相談することも大切です。愛犬の健康管理を通じて、より一層深い絆を育んでいきましょう!


